会社を分社化するデメリットとは?
企業が新しい事業展開を検討した時の手段の一つとして行われるのが、会社の分社化です。
分社化にはコスト削減や買収した企業との兼ね合いをうまくするなどの目的があり、多くのメリットがあると言われています。
ただし、メリットばかりではなくデメリットにも注視する必要があるため、今回は会社を分社化するデメリットを解説していきます。
目次
1.バックオフィスのコストが肥大化しやすい
会社を分社化するということは、本社とはまた別に会社を作って本社にかかってくるコストを分散するという目的があります。
こうすることによって本社の管理・運営にかかってくるコストの肥大化を予防できるというメリットがあるのですが、ここで注意しておきたいのが「分社化したバックオフィスにもコストがかかってくる」ところです。
分社化した会社は本社と分社それぞれが独立した企業として管理・運営していくため、バックオフィスのコストがどんどん肥大化してしまうというリスクを抱えています。
その結果、分社化する前よりも本社にかかってくるコストが肥大化してしまう場合もありますし、分社のコストが肥大化しすぎて管理・運営ができなくなってしまうというケースもあります。
特に総務や経理、人事などの会社内部の業務に関する部署は生産性がないためコストがかかりやすいのですが、会社にとって守りの部分となるので削りにくいという面を持っています。
そのため会社を分社化する場合はバックオフィスにかかってくる費用をどのようにするのか事前に相談する必要があり、場合によっては費用を按分してシェアするなどの対策を講じながらコスト削減を検討することが大切です。
2.分社化による本社との軋轢のリスク
分社化された会社は本社と分社それぞれが独立していますが、同じグループ会社となるためそれぞれに利益配当が配られます。
本社と分社がそれぞれ利益が安定している状態であれば利益配当も平等になるので、お互いに良好な関係を保ちやすくグループ会社としての結束も高めやすいです。
これによってより高い生産性や利益を生み出すことができるのが、分社化のメリットだとされています。
ただ本社または分社のどちらかの利益が不安定になってしまった場合、利益を維持している会社の方に負担がかかりやすいという点がデメリットだと言われています。
例えば本社側の運営や経営状態が悪化してしまった場合、分社の方が利益を上げていればグループ会社そのものの利益は安定します。
ただ利益配当は同じように配布されるので、本社側の利益が下がったとしても利益配当にすがれば会社そのものは維持できるのです。
そうなってしまうと当然利益を上げている分社の方に不満が出てきますし、場合によっては本社側との軋轢が発生してしまうリスクもあります。
これは本社と分社の立場が逆になっても同じですし、関係が悪化してしまうとグループ会社からの独立を検討されてしまうケースも考えられます。そのため、分社化による目的や趣旨を明確にしながら関係悪化を防いだり、悪化した場合の対策を話し合うことが必要です。
3.完全に連結しないと節税対策ができない
会社の分社化のメリットの一つに、節税対策があります。分社化すると消費税免税処置や各種税額軽減策ができるようになるので、手軽に節税対策が可能となっています。
また企業が複数の事業や配当で収入を得ている場合、損益通算を行うことができるようになっています。分社化した場合は本社と分社はそれぞれ独立した企業となりますが、連結納税制度を利用すれば親会社と子会社を合わせて1つの会社としてみなしてもらえるのです。
そうすると法人税の損益通算を行うことができるため、利益を圧縮して大きく節税することが可能となります。
ただし分社化の場合はどのような形でも損益通算ができるというわけではなく、あくまでも親会社と子会社が完全に連結している状態でなければいけません。
例えば分社化が発展的な目的で行われているかどうかがポイントになりますし、最も重要なのは親会社が子会社の株式を完全に取得しているかどうかです。
もしも親会社が子会社の株式をあまり所持していない場合は連結納税制度は利用できないので、損益通算をすることもできないとされています。
この状態では節税対策ができないのはもちろん、バックオフィスのコストの肥大化がどんどん進んでしまうリスクも考えられます。このため節税対策で分社化する場合は、完全に親会社と子会社が連結できるかどうかをそれぞれが話し合って検討する必要があるのです。
4.まとめ
会社の分社化にはコストの肥大化予防や節税対策などの様々なメリットがありますが、管理・運営する会社が増えることによって発生するデメリットやリスクも少なくありません。
場合によってはメリットを活かせなくなってしまうので、分社化する際には子会社となる企業としっかり話し合って対策や方針を決めることが重要だとされています。